【レビュー】原作に忠実かつ丁寧で「わかっている」作品だったスーパーマリオRPGリメイクの話

ゲーム

最近時間とメンタルがやばいですね、時間はまぁ減りつつも自分のことが全くできないレベルではないのですが、とにかく仕事で精神が摩耗しています。管理職はしんどい。時間外に業務が発生するとか連絡が来るとかは別に全然構わないのですが、人を動かす業務の悩みの多さよ。家に帰ると抜け殻みたいにエネルギーが無くなってしまうことが多々あります。

さて、発売からは少し時間が経ってしまいましたが、作品のリメイク発表自体は心から喜んだものです。それぐらい心に残った傑作だったと言えるでしょう。リアルタイム、バーチャルコンソール、そして本作と、時間を置くとふと遊び直したくなってしまう魅力と気軽さがあるタイトルでした。

あくまで比較中心の、リメイクである本作のレビューになります。原作時点であった要素については前提知識として触れています。

  1. 良いところ
    1. 当時の雰囲気を壊さないグラフィック
    2. 全体的にスピーディに
    3. アイテムがスタック制になった
    4. コインが999枚以上持てるようになった
    5. BGM切り替え機能
    6. 取り返しがつかない要素への救済
    7. 「おしらせリング」が最序盤に手に入る
    8. 戦闘中ターン消費無しで入れ替えが可能に
    9. アクションコマンドのジャストタイミングの可視化
    10. ジャスト(攻撃)成功で敵全体にダメージ
    11. 「きょうてき」は良いスパイス
    12. アクションコマンド(ガード)で軽減できる攻撃が増えた
    13. イベント演出の間やBGMやSEの鳴るタイミングがかなり忠実
    14. 一部追加イベント、セリフ等あり
  2. 賛否両論あと一歩
    1. 難易度は低め
    2. おたすけキノピオと協力技
    3. BGMのアレンジ
    4. 地図からのファストトラベル
    5. マリオのピースサインが無くなった
    6. クリア後のおまけである強化ボスもそこまで強くない
  3. 悪いところ
    1. メッセージ送りが決定(A)ボタンのみ
    2. ブッキータワーのクッパ加入時のセリフ削除
    3. スターピースの取得がムービー
    4. 本当にごく一部のSEが残念
    5. ワールドマップ移行時のロード
    6. ムービーが飛ばせない
    7. レベルアップボーナスは振り直しをしたかった
    8. 追加要素が少ない、物足りない
    9. ミニゲームのトロッコは個人的に改悪
    10. 入力遅延が気になる
    11. たまに起こるフレームレート落ちが気になる
    12. 倫理的な問題による修正
    13. エンディングパレードの意図は一体(ネタバレ注意)
  4. 総評

良いところ

当時の雰囲気を壊さないグラフィック

基本的にそのままグレードアップしたようなグラフィックなので違和感もありません。順当に綺麗になっていて感動しました。

全体的にスピーディに

特に顕著に感じるのは戦闘ですかね、明らかにテンポが上がっています。アクションコマンドのタイミングが当時の記憶のままだと、このスピードの変化+入力遅延+自身の老化で慣れるまで結構外しますよ。

アイテムがスタック制になった

原作では最大30の枠を個別で管理していたものがアイテム毎のスタック制&上限ありになりました。例えばキノコは最大x個持てる、レッドヨッシーエキスは最大x個持てる…等で、溢れた分はアイテムボックスへ送られるので紛失もありません。

管理が楽になったので基本的にはプラス要素ですが、強力なアイテムを満載するみたいなことはできなくなりました。

コインが999枚以上持てるようになった

普通に進めていても溢れますからね、所持上限が撤廃されたのは素直に良いことだと思います。

BGM切り替え機能

当時のままの音源とリメイク音源を好きなタイミングで自由に切り替えができます、単純に良い要素。

取り返しがつかない要素への救済

キノコ城の例の隠し宝箱や、一部限定エリアの敵の図鑑情報、ミニゲーム成功時のみの限定報酬等、あとからでも対応できるようになりました。

「おしらせリング」が最序盤に手に入る

隠し宝箱があるエリアに行くと音で知らせてくれるアクセサリーです。まぁ私はやってみて自分で驚いたのですが、8割ぐらい場所を覚えていたのであまり活躍しなかったですね。

戦闘中ターン消費無しで入れ替えが可能に

これによる恩恵が大きいのは「マロ」でしょう。総合的なスペックの低さからずっと控えだったプレイヤーも多いとは思いますが、実際のところ序盤~中盤での全体攻撃役かつ図鑑埋めのための「なにかんがえてるの?」役としてかなり優秀なんですよね。

また、操作不能になる状態異常の「キノコ」「眠り」や戦闘不能状態でもターンが回ってくると入れ替えが可能なため、立て直しもかなり楽です。

アクションコマンドのジャストタイミングの可視化

原作だとこれわからないんですよね。だから知らずにプレイしていると「なんかたまに大きいダメージでるな」とか「たまに受けるダメージが0になるな」としか思わないんですが、明確に可視化されたことでタイミングが図りやすくなりました。

ジャスト(攻撃)成功で敵全体にダメージ

これも追加要素ですね、些細なダメージなのですが、割とバランス的に「2発で倒せる敵は1発目で8~9割削れている」ということが多いため、これによってターンを節約でき戦闘を早く終えることが多くなります。

「きょうてき」は良いスパイス

ランダムで敵の中に「きょうてき」が交じることがあり(体感5分の2ぐらい)、見た目こそ同じエリアの敵と同じですがステータスが強化されています。この敵が本当に「きょうてき」なので、気を抜くと苦戦を強いられます。ちなみに倒すとカエルコインを落としてくれるので、原作のようにミニゲーム周回しなくても集められるようになりました。

アクションコマンド(ガード)で軽減できる攻撃が増えた

敵の一部の攻撃でアクションコマンドが無効になるのは原作からあった要素ですが、今作でガードが可能になったものがちらほら見受けられます。

イベント演出の間やBGMやSEの鳴るタイミングがかなり忠実

細かいところまでかなり気を使っていて、プレイ中私は「そうそう、これだよこれ、よくわかってるわー」と脳内で何度も繰り返していました。

ただ完全再現とはなっておらず、一部ではありますが残念なところもあったのでそれは後述しましょう。

一部追加イベント、セリフ等あり

ささやかな量ではありますが増えています。

賛否両論あと一歩

難易度は低め

原作の時点で「RPGをやったことがある人もそうでない人も」とCMで謳っていましたし、ベースとして難易度は低いゲームです。其の上でいくつか快適になる要素が追加されているため、原作以上に難易度が下がっています。ちなみにゲーム開始時に難易度選択がありますが「ノーマル」での評価です、更に下の「カジュアル」は遊んですらいないのでわかりません。

「ハード」…今からでもいいから追加とか無いですかね…?

おたすけキノピオと協力技

戦闘の追加システムですね。PTメンバーが2人以下のときはおたすけキノピオ、3人いるときはメンバーに応じて変化する協力技ですが、(良くも悪くも)どちらも局面を大きく左右するほどの効果は感じ取れなかったなぁというところです。ある意味良い塩梅なのかもしれません。多分ターン消費無しで使えたらそれだけで価値が爆上がりしていたかと。

演出ムービーをスキップできるのは◯です。

BGMのアレンジ

これは本当に好みの世界ですが、十分良いとは思います。ただもうちょっと攻めてもよかった。順当に音源を良くして一部の曲は数小節追加したぐらいのニュアンスでしかないので…。

地図からのファストトラベル

過去に訪れたエリアは地図から一発で飛べるようになり、それ自体は便利なのですが、その地図を開くのにいちいちメニューから進まなければいけないのはちょっと手間ですね。ワンボタンでポチッと開けるぐらいじゃないと。

マリオのピースサインが無くなった

原作では象徴的なポーズではありましたがグローバル展開的な意味でよろしく無いのでしょう、帽子を取るリアクションに変わりました。ただこれ、原作の時点で英語版だと無くなっていたと聞いています。

クリア後のおまけである強化ボスもそこまで強くない

これは人によるところはあるとは思いますが、結局レベル上限が30でストーリー後半でちょっと雑魚狩りしていればすぐ到達するじゃないですか。そしてその強さを基準に勝てる相手でしか無いのでそこまで苦労しないんですよね。勿論ストーリーで戦う時ほど脳死ではないですし、ちゃんと耐性装備や協力技のメンバー、ターン毎の行動パターンといろいろ考える必要はありますけど。あとギミック攻略的な側面もあります。

例えば、レベル上限撤廃して50まで上がるようにする→50で普通に戦って苦戦するぐらいの難易度→戦略を練ればレベル30でも撃破可能、みたいなところが求めていたバランスではあります。

ちなみに稼ぎが必要な部分といえばカエルコインぐらい?

悪いところ

メッセージ送りが決定(A)ボタンのみ

私は何度も繰り返し書いていますが、RPG等に置いて「極力片手で操作できる」ということを凄く重視しています。勿論本作のように戦闘にアクション要素がある場合は常に片手持ちなんてできはしないのですが、それでもメッセージぐらいは他のボタンで送らせてもらえたっていいじゃない。

アナログスティックをぐりぐり回しているだけで入力判定があって高速メッセージ送りができるゲームだってある時代です。また、キャンセル(B)ボタンでも送れる仕様の場合、選択肢が現れた時に意志とは関係なく選んでしまうことを防止することもできます。

ブッキータワーのクッパ加入時のセリフ削除

入口でマリオと別れた後、唐突に戻ってきたクッパが「なんだまだ居たのか、扉が開かないのか、ちょっとそこをどけ」みたいなセリフを吐くんですよ。今作だとこれがまるまる無くなっているんです。ムービーになっていてジェスチャーのみの表現になっています。

スターピースの取得がムービー

惜しいです、なぜ一律ムービーで統一してしまったのか。原作ではスターピースを掴む時にエリアによってちょっとしたマリオのリアクションの違いとかがあって、それもまた面白かったんですよ。

本当にごく一部のSEが残念

全体的にはよく出来ているんです。ただ私が明確に悲しみを感じたのは、「ジーノごっこ」でマリオが誤射されるときの音。あのショット音が凄い腑抜けた感じになっていたのは非常に残念でした。

ワールドマップ移行時のロード

本当にあと少し頑張って欲しかった、決して長いわけではないですが…。

ムービーが飛ばせない

今の時代にこれか…。実際のところストレスはそこまで大きくありません。というのも基本テンポが良いゲームで、ムービー自体は最小限しか無く、それも短い時間なので。とは言えスキップはできるようにしておいてほしかったですね。

レベルアップボーナスは振り直しをしたかった

別にどんな振り方をしていても(クリア後のボス含めて)攻略可能な難易度だとは思いますが、それはそれとして振り直しができる手段は用意していてほしかったです。

追加要素が少ない、物足りない

原作が良いゲームだからこそ、だと思うんですよね。下手にゴテゴテ増やしてもプレイヤーの「これじゃない」認定を貰う可能性が高くなりますし、凄く難しいところだとは思いますが、本作はかなり「保守的」な感じがあります。

イベントでちょっとした追加のセリフがあったり、ミニゲームや戦闘システムに多少手が入っていたりと、勿論リメイクならではの部分はあるのですが、基本的に「当時のまま」な作品です。

レベル上限撤廃、新たな追加ボス、追加エリア、クリア後の要素等はあっても私は悪い印象を抱くことは無かったでしょう。

ミニゲームのトロッコは個人的に改悪

ミニゲーム全般多少手が入っていますが、トロッコに関してはプレイフィールが明確に悪くなっていると思います、急カーブが直前ブレーキで対応できなくなっているんですよね。スピードメーターが実装されていて、そのメーターの規定ライン以下までスピードを落としていないとコースアウトします。ちゃんと少し手前から減速して曲がるようにしないといけないのでテンポが悪くなったなぁと。

入力遅延が気になる

これね、SFC+ブラウン管という環境から変わっている以上本当にどうしようもないことではあるんですが、割とシビアな入力を求められるタイミングもあるので、原作との差をかなり感じるところではありました。

…もしかしたら歳のせいかも。まぁ反射神経は間違いなく当時より鈍っていますよね。

たまに起こるフレームレート落ちが気になる

基本は安定していて快適なのですが、たまに起きるからこそカクッとして気になってしまうのです。

あと沈没船前の海等、大量の水のあるところはベラボウに落ちますが、これはもうSwitchのスペック不足ですね。

倫理的な問題による修正

なにかんがえてるの?→マメクリボー

エンディングパレードの意図は一体(ネタバレ注意)

パレードの前半はこれ、原作のドットアニメーションをアップサンプリングしたものなのかな?打ち直している感じは見受けられないです。で、パレード後半の夜になるとリメイクの作風にグラフィックがアップデートされるんです。

私個人の意見としては、スタンダードにパレード全体をリメイクのグラフィックで作り直して貰いたかったですね。おまけとしてクリア後の強化ボスを全部倒してからもう一回エンディングを見ると全部がドット絵のままのバージョンになっていたりとかの変化の付け方をするとか。

うーん、おそらくなんですけど、原作→リメイクの進化を感じ取って欲しくてこのような演出にしたのかな、とは思っているのですが、なんとも中途半端な印象の方が残ってしまう感じでした。

総評

「懐かしさに浸りたい」という気持ちを裏切らない丁寧なリメイク、現代のゲームとして考えると演出は淡白だがその分テンポが良く、短い時間で終えられ、難易度も低いので誰でも楽しく遊べるRPG。

基本的にリメイク作品は市場の評価が厳しくなりがちです。それこそ当時リアルタイムで遊んでいた人たちがターゲットになり、その人達は思い出として体験を美化していますから。細かいことを言うと、BGMとイベントの噛み合い方とか、SEの音質やそれが鳴るタイミングとか、そういうところにまで評価のメスが入ってしまうのです。原作とガラッと変えてしまうようなリメイクならともかく、寄せるとなると避けられない道です。

そして本作は、その原作経験者を「わかっている」リメイクでした。よくある言い回しをさせてもらうなら「愛がある」。悪いところにちょっとだけ至らない点を上げてはいますが枝葉です。

普通に遊んでも15時間前後で終えることができるでしょう、既プレイ者はもっと速いと思います。それでも密度が濃いため満足感も高く、一本ちゃんと「RPG」を楽しんだ感覚は得られます。図鑑を埋めたりミニゲームのレコード更新等やることはありますが、それでも30時間もあれば一段落するんじゃないでしょうか。

リメイク作であることや、総合的なボリュームを考えると価格がちょっと強気だなとは思いますね。それこそ既プレイ者にとっては得られる新しい体験は本当にごく僅かで、基本は懐かしむのがメインのゲームとなっています。