「テトリス」が世に出てからどれだけ経っている事でしょう。ゲームの始祖といえば「PON」ですが、一般普及レベルでムーブメントを起こしたのはテトリスやインベーダー辺りではないでしょうか。単純明快なルールとその面白さで老若男女楽しめる、文字通りの「ゲーム」なのです。オンライン券が付属したパッケージ版も発売することですし、記念にこの記事ではNintendo Switchのオンラインに加入すると無料で遊べるバトルロイヤル型の「Tetris 99」のレビューを書いていきましょう。
私は結構テトリスは好きで、一番ハマった時期はゲームセンターでグランドマスターを回していました。Tetris 99はグラマスと同じアリカが開発だったと記憶しています。
良いところ
参入ハードルの低さ
戦うにあたっての細かな戦略やちょっとした要素はありますが、基本はブロックを消していくだけのシンプルなルール、誰もが説明不要という事でとにかく参入がしやすいです。また、バトロワ系共通の事柄でもありますが、リプレイ性が高く、やられた時の精神的な苦痛が少ない(個人差あり)というのが、より初心者でもとっつきやすいものとなっています。
優れたUI
褒めるべき点はテトリスとしてのUIではなく、バトロワ系としてのUIの配慮です。まぁゲームのルール上自分が大きく見えないとお話にならないところもあるのですが、戦っている感が薄いというのがかなり大きいですね。このUIは対人ものに対するアレルギーがあってもすんなり入っていける配慮がされている思います。だからと言ってこちらの攻撃、相手の攻撃が見えにくいわけではなく、狙われた時、お邪魔ブロックが送られてきている時とかはきちんとそれらが把握しやすいようになっていて、UI面に置けるストレスは殆どのないでしょう。
操作性の良さ
グランドマスターと同じアリカ開発、というのもあるのでしょうが、とにかく操作性が良いですね。ハードドロップやホールド等の昨今の基本機能は勿論、一つ一つの操作レスポンスがとにかく良くて、SEGA製の昔のテトリスやGBのテトリス以来の人からすれば衝撃を受けるのではないのでしょうか。
ある程度狙いを定められる
個人狙いはもちろんのこと、完全なランダム攻撃、狙ってきた相手に返すカウンター、バッジ(後述)狙い等、自分の戦い方や周りの状況によってある程度戦略を組み立てることができます。
バッジによって攻撃力が変わる
自分が誰かにトドメを刺すとバッジを貰え、基本的な攻撃力がアップします。後半生き残る猛者たちは基本バッジを持っているので、序盤日和見をして生き残っても後半火力負けして戦えないので、きちんとバッジを集めていく必要性があるのです。ただ、バッジは持っていると非常に狙われやすく、フクロ叩きにも合うのでその辺りのタイミングや取捨選択の見極めが非常に重要になってきます。
消し方で攻撃力が変わる
ひたすら消せば相手にお邪魔ブロックが送れる、というだけではありません。4列同時消しの御馴染みの「テトリス」他「Tスピン」、連続で消していけば「REN」という扱いになり、相手に送れるお邪魔ブロックの列数が増えていきます。一人でスコアアタックするタイプだと基本テトリス狙いで消していくわけですが、こちらに送られてきているお邪魔ブロックの数や相手との戦い方によっては1列ずつでも「REN」の方が効果的だったり攻撃力が高かったりもするわけです。
賛否両論
実力による振れ幅が少ない
ゲームの性質上、スタートから「全員」を見ることができるわけで、これによって起きることは「目立った人は序盤にフクロ叩きにされる」てことでしょうか。まるで出る杭は打たれる社会の縮図のようです。
言い換えると、ある程度安定してTOPを取れるようなレベルの人でも序盤に一気に送り込まれると辛いわけで、テト運の悪さと重なると70位〜みたいな序盤も序盤で落とされてしまうことがあります。また、逆に初心者は頑張っても目立つことはないので、シレッと後半まで生き残ることが多いです。勿論残り一桁とかになると周りがみんな上手いですし、バッジを持っていなければ勝負にならないので偶然TOPを取る、なんてことは非常に難しいですけどね。
良い言い方をすれば初心者から上級者まで順位が揺れやすいシステムになっていて、上位を取ろうとするとかなり安定した実力が必要になる、という感じです、マリオカートみたいですね。悪い言い方をすると、ある程度の実力差は状況と運次第でどうにでもひっくり返ってしまう、というところでしょうか。
一番辛いのは「中途半端に上手い人」でしょうね。序盤目立ってフクロ叩きにされればそれにカウンターして捌けるほどの上手さも、後半生き残れるほどの上手さもないわけですから。初心者をLv1、プロ級をLv99とした時に、Lv30〜Lv70ぐらいの人は順位ベースの戦績で見たらそこまで差が無いのでしょう。
「一部の飛び抜けた上手い(下手な)人以外はみんな横並びになりやすい」というのはバトロワとしては正しい考え方ですが、競技性は薄いですね。
レーティングが無い
戦績に応じてそれを表す数値やランクが無いですし、おそらくですがマッチングも完全にランダムです。スプラやスマブラみたいに自分の実力帯がわかるわけでも、近いレベルの人と戦えるわけでもありません。本当の意味で「ごちゃ混ぜ」なわけです。
個人的にはマッチングシステムはともかくとして、順位ベース、取得バッジベース、列の消し方やテクニックの利用回数とかを総計して、何か実力の指標になるものがあってもよかったとは思っています。プレイヤーランクは下手でもずっと遊んでいれば勝手に上がりますからね。それらが他者からも見えると上位のプレイヤーを見た時に、視覚的にどういった「ウデマエ」の人が勝ち上がっているのかわかりますから。
悪いところ
テトリスはもはや完成されていますし、ゲーム性、UI、エフェクト等も特にいうことがありません。それでも強いて挙げるなら以下でしょうか。
BGMの音量がでかい
他のゲームから移ってきたときに思うのですが、なんかでかくありません?
対象を絞ったときの視認性は悪い
1画面に99人全部表示するので当たり前っちゃ当たり前ですが、一人一人の進行状況を細かく見るのは向いていないです。序〜中盤なんかはざっくりわかればいいので問題ありませんが、残り1桁とか残り5人になったとき、それぞれの状況をより細かく見定めたい、と思うことはあります。KOされた人が画面から抜けていき、その分一人一人が大きく表示される仕様なら何も言うことはなかったですね。
総評
「ガチるのではなく気軽に遊ぶもの」かなぁと思います、ゲーム全体がそちらに照準を合わせているように思えますね。最初からガチろうと思うとレーティングや評価システムが無いことや、ルール上運や状況に左右されやすいのが微妙にストレスです。あくまで遊んでいる中で「一桁まで生き残ったらガチる」みたいな感じでしょうか。負けても「はい次〜」と気持ちを切り替えて遊ぶ、まぁ本当に「バトロワ系」のゲームなわけです。それでも、多人数ならではの戦い方を覚えたり自身の実力自体を底上げすれば上位に残りやすくなるので、決して対人要素が薄いわけではありません。
「他のオンライン対応ゲームを遊ぶつもりで加入したのに、いつの間にかTetris 99ばかり遊んでいた」なんて状況の人、結構いるのではないでしょうか。このゲームにはそれぐらいの中毒性と完成度があると思います。